心房細動患者を発見する取り組み
Efforts to find patients with atrial fibrillation.
心房細動(AF)を有する患者さんは人口の高齢化とともに近年増加傾向にあります。そのほとんどは非弁膜症性心房細動(NVAF)であり、 転帰不良例が多い心原性脳塞栓症(CE)の主たる発症原因となっています。そのため、AFに起因するCEの発症を抑制することが望まれています。したがって、AFを適切に管理するとともに、AFを発症早期に発見し、適切な治療を開始することが大切です。しかしながら、脳神経外科単科病院として、脳卒中治療後の二次予防患者を含めて、近隣住民の生活習慣病管理を主に行っている当院一般外来において、無症候性AFを発見できる体制にはなっていませんでした。そこで、2011年末以降は、外来患者を対象に、既存の無症候性AFあるいは新規発症AFを積極的に発見する取り組みを行っています。

脳卒中予防啓蒙ポスター
日本脳卒中協会の平成26年度標語テーマは、「不整脈(心房細動)の早期発見による脳卒中 の予防」となっています。平成25年末には、この「脳卒中標語募集」に応募しました。スタッフの考えた標語17件を応募するとともに、院内でも投票を行い、優秀賞を決めて、平成26年に表彰いたしました。図の「不整脈 早めの治療で NO卒中!」は、当院での優秀賞です。なお、当院から応募したものは、残念ながら日本脳卒中協会の標語には採択されませんでした。当院ではこの優秀賞の標語を平成26年の患者啓蒙活動やポスターなどに使用しています。
ちなみに脳卒中協会の当選標語は「すぐ受診 動悸は危険の ふれ太鼓」です。不整脈の危険性をアピールすのには良い標語だと思います。

Find AFからCare AFへ
心房細動(AF)が早期に診断され適切に治療されている患者は、それほど多くはなく、むしろ氷山の一角ではないかと考えています。心原性脳塞栓患者増加はそれを裏付けています。今後、水面下に沈んだ無症候性AF患者, あるいは新規AF発症患者をいかに水面上へ引き上げ(Find AF)、適切な治療(Care AF)につなげていくかが重要な点であると考えます。
脳梗塞病型分類のうち約3割を占める心原性脳塞栓症においての予防ターゲットは他の病型の脳梗塞に比較して、絞りやすいと思います。もちろんラクナ梗塞やアテローム血栓性梗塞の発症基盤となる生活習慣病は、心原性脳塞栓症においても重要な危険因子ではありますが、それに加えてAFの存在が決定的となります。ここをターゲットに、予防戦略を立てれば、より効果の高い治療が可能になるのではないでしょうか。

外来での心房細動スクリーニング
私達の脳神経外科外来のように、循環器外来以外を想定しての図です。私達の外来には、未治療のAF患者、PAF患者、さらには新規発症してくるAF患者が紛れています。
これらの患者さんは、動悸や息切れなどの自覚症状があれば、循環器科受診となり正しくAFが診断される機会があります。そうでない場合は、年1回程度の健診で、偶然、AF患者がひっかかる以外、定期に外来受診しても、そのままスルーされ、患者の発症リスクに応じて脳塞栓を発症していくと思われます。
AFの外来スクリーニングでは、精度の高い方法で、PAFや新規発症のAF患者さんを見逃さないようにしていくことが重要ではないかと考えています。脳神経外科以外の外来であっても、検脈の機会を持たない診療では、AF患者の多くが見逃されていると考えた方がよいでしょう。
当院外来では、Find AF projectにより、不規則脈波検知機能付き血圧計(Heart Station)および自作のAF検知アプリ(Pulse Analyzer)により、高精度のAFスクリーニングを行っています。