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日立市医師会夏季集談会 2014.8.21

 

心原性脳塞栓症発症前の抗凝固療法状況

聖麗メモリアル病院 岡部 慎一

佐藤 明善、田村 康夫、藤山 陽子、粕谷 泰道、杉山 耕一、布施 仁智

 

【目的】

 心房細動(AF)あるいは発作性心房細動(PAF)は、心原性脳塞栓症(CE)の原因となるため、抗凝固療法を中心に適切な治療をする必要がある。今回、当院で治療にあたったCE患者の発症前の抗凝固療法状況について調査し報告する。

【対象と方法】

 2011年から2013年の3年間に入院した全ての虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作を含む)は1492人であり、そのうちCEと診断された患者は299人であった。毎年脳虚血患者の20%前後がCEである。その299人につき、かかりつけ医の有無、抗血栓薬投薬状況、不整脈の指摘状況、ワルファリン投与下のPT-INRの値などにつき調査した。

【結果】

 CE患者の91%はかかりつけ医を持ち、継続的な医療を受けている状況であった。16%は当院外来通院患者が、CE発症で当院へ入院していた。抗血栓薬の内服状況では、抗血小板療法のみの患者が30%を占めており、その半分以上は、AFの治療として用いられている可能性があった。抗凝固療法は新規経口抗凝固薬を含めて27%という状況であった。心房細動の存在が分かっていても、抗凝固がされていない、あるいは、抗血小板剤で治療という例が多くある一方、不整脈が指摘されずに、脳塞栓を発症してくる患者も少なくなかった。指摘されないというのは、AFがあっても、認知されずにいる場合と、新規に発生してくる患者の両者が含まれる。なお、CE患者の退院時転帰は、mRS4、5、6が60%を占め極めて不良であった。

【考察】

 脳卒中データバンク2009の報告でも、CE発症患者の約半数は抗血栓療法が行われておらず、抗凝固療法は17%にとどまり、16%はCE発症に無効な抗血小板療法であった、と報告されている。当院での経験では、抗血栓療法患者はデータバンクよりは多いものの、抗血小板薬が多く処方されていた。CE発症予防のためには、抗凝固療法の普及の他に、無症候性AFやPAF患者を早期に発見し、治療に結びつけていくことが重要であると思われる。

【結語】

 当院で治療を行ったCE患者299人につき、発症前の抗凝固療法状況を調べたが、AF、PAF患者に対するCE予防治療は未だに不十分であった。

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